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2014年7月11日金曜日

コラム ロシア帽をかぶったサル アビシニアコロブス

本日、ズーラシアでアビシニアコロブスの赤ちゃんが生まれたという情報が入ってきました。
アビシニアコロブスというサルの仲間、私は東京居住ですので、上野動物園でよく見ます。
観察のポイントをまとめてみました。
アビシニアコロブスの写真

※写真はウィキメディア・コモンズより。著作権情報はウィキメディアの当該記事の情報を参照してください。

長ったらしい名前?

「アビシニア」と「コロブス」に分けて読みます。
アビシニアは今のエチオピアのことです。以前は「アビシニア」と呼ばれた時代もありました。猫でも「アビシニアン」という品種があったりしますよね。
コロブスというのは、コロブスという種類のサル全般につけられた名前(コロブス亜科といったほうが厳密かな?)です。
アビシニアのコロブス、つなげてアビシニアコロブスというわけです。ちなみにコロブスの仲間にはアンゴラコロブスなどがいます。中国のキンシコウもコロブスの仲間ですよ。

見た目の特徴

初めて見た時の印象が「このサル、ロシア帽かぶってる」。
よく見ると帽子をかぶっているというよりも、顔のまわりの毛が白くなっているのですが。
この白い毛の生え方のせいか、どれもこれも、みな困った顔をしているように見えてしまいます。
もちろんさらによく観察すると、顔にはサルらしい表情があることがわかります。

全身

全身を見ると、背中にはマントがあります。
こちらもよく見ると、マント状の皮膚かなにかを身に着けているわけではなく、背中の周囲にそってぐるっと目立つ白い長い毛が生えているだけだということが分かります。
そしてさらに目立つのがふさふさの長い白い尻尾。
尻尾が長いのは木の上や、木から木へのジャンプの際にバランスをとるため、ということで説明できるのですが、このフサフサは一体何の役に立っているのでしょうか。

体色

体全体が白と黒だけのくっきりとしたカラーリングで構成されているというのも興味深いです。毛はすべて白か黒ですし、皮膚が露出している顔や手も黒いので、全身が白か黒です。色がついた部分はおろか、中途半端な灰色っぽい部分も見当たりません。
これが木々の間では保護色になるのだというのが専らの説明なのですが、とにかく動物園で見ている限りではとても目立っています。ちなみに天敵はヒョウやワシの仲間です。

生息地

アフリカに棲んでます

これだけ毛がフサフサしているのだから、棲んでいるのはよほど寒い地方なのだろうと思いきやさにあらず。アビシニアコロブスが棲んでいるのはアフリカ大陸のほぼ赤道直下。主に熱帯雨林気候とか言われているあたりです。
私たちの身近にニホンザルがいるせいで、サルはどこにでもいる生き物であるかのように誤解しがちなのですが、実はニホンザルが例外的に温帯に棲んでいるのであって、本来、サルの仲間は熱帯など暖かいところに棲む動物なのです。ちなみにヨーロッパにはサルの仲間は棲んでいません。
というわけで、熱帯雨林暮らしとなると、いよいよこのフサフサした毛は暑すぎるのではないかと思えてきます。動物園でも暑さのあまり、夏にはコンクリートの地面に全身を投げ出してへばりついている姿が見られたりしますし。

ここでちょっと中央アフリカの気候を調べてみると、興味深いことが分かりました。
例えばその名もずばり「中央アフリカ共和国」の首都、バンギの場合です。こちら、一年を通じて平均最高気温が30℃から34℃となっています。一方で夜は年間を通じて最低気温が20℃前後。これって連日熱帯夜になる東京の夏のほうがよっぽど暑いです(湿度はバンギのほうが高いです)。
夜の気温のことを考えると、現地では決して毛が多すぎるということはないのですね。

樹の上に棲んでます

そして生息地についてもう一つ押さえておきたいポイントがあります。
アビシニアコロブスは樹の上に棲むサルです。中央アフリカにはサバンナも広がっているのですが、そのような草だらけのところではなく、樹のあるところに棲んでいます。
動物園ではともかく、野生のアビシニアコロブスは樹の上で暮らし、地面に降りてくることはめったにないといわれています。そのほうが安全だからでしょうね。
上野動物園では獣舎の都合で樹から樹へ飛び移る姿というのが見られないのですが、それでも子どもは柵から柵へと飛び移って見せてくれますし、大人も平気で高いところに登ってしまいます。
これに関連して、観察のポイントがあります。
アビシニアコロブスの手に注目してください。私たちの手にそっくりな指があるのですが、親指が見当たりません。樹から樹へ飛び移るのに邪魔な指は退化してしまったのですね。同じように樹上で生活するオランウータンには親指があるのに不思議です。オランウータンは樹から樹へ渡ることはあっても飛び移ったりはしませんから、その差でしょうか。
ちなみに、足のほうには、私たちヒトよりもよっぽど立派な親指がついています。

赤ちゃん

この記事を書くきっかけになったのは、ズーラシアでアビシニアコロブスの赤ちゃんが生まれたというニュースでした。
アビシニアコロブスの赤ちゃんはとにかく真っ白なのが特徴です。ロシア帽をかぶってもいなければ、マントも着ていません。
3か月ほどで大人と同じ色が出てきてしまいますので、真っ白な赤ちゃんを見たければ、「赤ちゃん公開」のニュースが入ったらすぐに動物園に行かなくてはなりません。
「生まれた」のニュースだけで慌てて行ってしまうとまだ公開されていなかったりするので注意してください。
アビシニアコロブスは群れで暮らします。子育ては群れの雌で協力して行い、必ずしも子供を抱いているのが母親とは限らないのも興味深いです。

以上の特徴を踏まえて、ズーラシアの愛称募集の記事(PDF)を改めて見てみてください。
森に棲む「ポリーニ」、樹と樹の間を飛び回る「ルカ」、白と黒のコントラストの美しい「ズリ」、どれが一番ふさわしいでしょうか。

アビシニアコロブスの見られる動物園

2014年7月現在でざっと調べたところ、日本では以下の動物園でアビシニアコロブスが見られるようです。東に偏っているかな?

参考資料

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